【原文】Should I consider medicine? No. I would be a failure, I was sure. Too bad! I liked the woods and football. But I aslo liked English poetry and, of course, physics, and then there was biology. My mind kept going in a circle.
【意味】医学を志すべきか? いや,きっと失敗するに違いない.ひど過ぎる! 自分が好きなのは森やフットボール.英詩も,物理学も,生物学も・・・ 心は堂々めぐりだった.
【説明】ワイルダー・ペンフィールド(1891-1976).てんかんを志す医師なら誰もが知っている名前.近代てんかん外科を立ち上げた巨人.麻酔を行わずに覚醒状態で脳を電気的に刺激し,大脳の機能マッピングを行ったことでも有名.彼がプリンストンの学生だった頃,将来の進路を悩んでいた時の図書館での回想の様子です.ちょうど今から100年程前の話です.結局ペンフィールドは医学を志すわけですが,その後の彼の活躍には物理学も生物学もきわめて重要な役割を果たしたことを私たちは知っています.フットボールも役立ったはずですし,きっと英詩も.この一節は,彼の自叙伝「No Man Alone(何事も,ひとりではできない)」からです(この続きは,左のサイドバー「きょうのてんかん」からお入り下さい).
本日,イーケプラ(薬品名レベチラセタム)が日本国内でも発売となりました.欧米や他のアジア諸国に比べても遅れている日本の抗てんかん薬のラインナップですが,ようやくこれで一段落です.
・商品名イーケプラ(薬品名レベチラセタム),2010.9.17発売,発売元は大塚製薬(新しいウィンドウで表示)・ユーシービージャパン(新しいウィンドウで表示)
・商品名ラミクタール(薬品名ラモトリギン),2008.10.16発売,発売元はグラクソ・スミスクライン(新しいウィンドウで表示)
・商品名トピナ(薬品名トピラマート),2007年9月26日発売,発売元は協和発酵キリン(新しいウィンドウで表示)
・商品名ガバペン(薬品名ガバペンチン),2006年7月26日発売,発売元はファイザー(新しいウィンドウで表示)
【原文】Hi, my name is Cassidy Megan. I’m nine years old and I have epilepsy. I started Purple Day because I wanted to tell everyone about epilepsy, especially that all seizures are not the same and that people with epilepsy are ordinary people just like everyone else. I also wanted kids with epilepsy to know that they are not alone.
【意味】キャシディ・メイガン,9歳,てんかんです.パープル・デイ活動を始めた理由は,みんなに「てんかん」を知ってもらいたかったから.とくに知って欲しいのは,発作は一人一人で種類が違うこと.それから,てんかんを持つ人も,持たない人と同じ普通の人間だということ.それから,てんかんの子供たちに,ひとりじゃないよと教えたいのです.
【説明】キャシディ・メイガンが始めたパープル・デイ(Purple Day)活動のホームページには,エリザベス女王がカナダのノバスコシアを訪問した時に,キャシディが女王を花束で迎える写真が掲載されています.この活動を2008年に始めたきっかけは,彼女自身が「てんかん」で悩んだことにあります.てんかんに対する偏見を取り除き,多くの人に病気について知ってもらい,また自分がてんかんだという患者さんに,仲間がいることを伝えたかったから,と書かれています.キャシディのアイディアを,ノバスコシアのてんかん協会が取り上げて,キャンペーンを開始したのです(この続きは,左のサイドバー「きょうのてんかん」からお入り下さい).
第7回てんかん症例検討会を
9月18日(土) 15時~ 東北大学病院 西11階病棟 セミナー室
にて開催いたします.
申し込み等は不要です.どなたでもお気軽にご参加ください.お車でお越しの方に外来駐車場の無料券をご用意しておりますので,当日会場でお申し出ください.なお,数に限りがございますのでご了承ください.
今回は4症例を供覧予定です。他にもご提示いただける症例がありましたら、ご連絡よろしくお願い申し上ます.
また今回は日本光電工業(株)のご好意により,迷走神経刺激装置のデモ製品をお借りしましたので,みなさまにご紹介申し上げます.
パンフレットはこちら(PDF)から
かねてより投稿・改訂中だった柿坂先生を筆頭著者とする論文が,雑誌 Clinical Neurophysiology (Elsevier) にアクセプトされました.ローランド棘波の局在が,良性のもの(BECCT)とそうでない経過をたどる群の間では異なる,という内容の脳磁図関連の研究です.
Kakisaka Y, et al.: Somatotopic distribution of peri-rolandic spikes may predict prognosis in pediatric-onset epilepsy with sensorimotor seizures. Clin Neurophysiol (in press)
追加情報:名誉なことに,Editorial付きでの掲載が予定されているとのこと!
クリーブランドクリニックてんかんセンター留学記 Vol. 1
私は2010年の3月よりアメリカのオハイオ州にあるクリーブランドクリニックのてんかんセンターに留学をさせていただいている東北大学小児科の柿坂庸介です.クリニックのあるクリーブランドは五大湖のひとつエリー湖南岸にあります.クリニックには多くの日本人留学生がおり,近所に住んでいる日本人の約半分がクリニックの関係者です.クリニックに関する情報から日常生活に関連する種々の疑問までこの先達に大いに助けられ,家族四人(妻と3歳男児,1歳女児)がなんとかこの異国の地でやっていけていると感謝する日々です.
私がクリニックで主たる業務としているのは脳磁図(MEG)に関連する臨床検査の解析と研究です.東北大学からは先に岩崎真樹先生(脳神経外科),神一敬先生(てんかん科)の両先生が既にこのMEGセンターでお仕事をされ私が3人目の留学生です.この地にきてはや6カ月が過ぎようとしていますが,月10-15例の脳波脳磁図検査の解析報告業務を中心に,神先生から引き継いだ深部電極(stereotactic EEG)と脳磁図の同時記録の研究や,本クリニックで多くの研究者の手引きとなる脳磁図マニュアル作成などの業務を行っております.研究に関しては一筋縄では行っておりませんがslow but steadyで進んでおり(と自分では信じております),今後のレポートで少しでも成果が御報告できればと思っています.
「クリーブランドは春夏秋は最高だよ」と皆さん口をそろえて言います(冬については皆一様に口を閉ざすところに少しばかり恐怖を覚えていますが….).仙台に楽天があるように,クリーブランドにはインディアンスという大リーグのチームがあります,成績は芳しくありませんが.思い出深いのはシアトルマリナーズのイチローがここクリーブランドにやってきたときに試合を見に行ったことです.このときちょうどニューヨーク州のロチェスター大学に留学されている東北大学泌尿器科の山下先生のご一家も当地に見え一緒に観戦しました.山下先生とはかつて八戸市民病院で一緒に仕事をさせていただいたことのある先輩です.全員が「生イチロー」は初めてだったので大興奮しました.ただしこの日のイチローがただき出した2安打のいずれも子供の世話で目を離したすきに見逃してしまったことは心残りですが.それでもイチローオーラを目の当たりにし,日本人であることを誇りにした瞬間の一つでした.ちなみにうちの3歳児はまだ野球に興味がなく,試合開始前の国歌斉唱や自軍のホームランの際に打ち上げられる花火におびえ,試合開始前から「帰るー帰るー」と言っておりました.もう再び野球観戦ができないのではないかとひやひやしております(汗).
渡米前は英語で暮らしていけるのだろうかと期待半分(以下),不安半分以上だったのですが,実際やってくるとなんとかなるものだと思います.もちろん話し方がわかりやすい人そうでない人がおり,コミュニケーションの可否は相手にもよりますが(そんなことを言っているのは私の力不足のせいですが).ただ相手が何を言っているか分らないときは,聞き直したり,[you mean..?]で言葉を換えて確認するといいのだと分かった時にだいぶ気が楽になりました.同様に何かを伝えようとするときも何かを行った後に「I mean..」と角度を変えて繰り返すとなんとかなるなとも感じました.私は幸いなことに大学院生のころに8カ月ほど研究室に来た留学生と日常会話をする(せざるを得ない)機会がありました.今にして思えばこれがかけがえのない経験だったと思います.あとは学術論文を書いていた時の言い回しも役に立っているのかもしれません(そのためにもしかしたら皆に「Yosukeの英語はなにか会話ではなく,論文口調だ」とおもわれているかもしれませんが…).
初めの2カ月は毎日必ずイベント(あえてトラブルとは言いませんが)がありましたが,少し慣れてきた最近では日々があっという間に過ぎていきます.この貴重な体験を少しでも来るべき日本での診療研究に還元しようとこれからも日々頑張っていきたいと思います.最後に留学の機会を下さった東北大学てんかん科の中里信和教授,小児科の土屋滋教授,私を快く送り出してくださった先輩同僚後輩の皆さんに感謝し筆を置かせていただきます.
・・・・写真をインターネット上に掲載することに関しては山下先生の許可を頂戴しております・・・
(写真中央の赤いシャツのお子さんを抱いているのが柿坂先生で,その左が奥様のはるか先生.右は山下先生)
【原文】It is not shameful not to know the answer, nor is it embarrassing to ask other colleagues. No-one, even the most expert, knows everything.
【意味】正解を知らないのは恥ずかしいことではない.同僚に質問することも,きまりの悪いことではない.誰一人,たとえ最高といわれる専門家でも,すべてを知っているわけではない.
【説明】Panyiotopoulos の教科書には,どのページにも,教訓的な言葉に満ちあふれています.「若き医師たちへの言葉」と題するコラムの中で,Panyiotopoulos先生が,「てんかん発作と紛らわしい症状」について勉強するための教科書リストを挙げています.この言葉は,その最後の方にかかれたメッセージです.私も小さい頃,母から何度も呪文のように言い聞かされました.「聞くは一時の恥,聞かぬは末代の恥」だと(この続きは,左のサイドバー「きょうのてんかん」からお入り下さい).
丹治順先生が中心になって設立された「東北大学包括的脳科学研究・教育推進センター(略称:東北大学脳科学センター)」のホームページができました.
センターについての概略,イベント情報,研究者の紹介,などが盛りだくさんです.
ホームページはこちらから(新しいウィンドウで表示)お入り下さい.
【原文】PNES can be classified into six stereotypic categories. Contrary to common belief, PNES demonstrates steteotypy both within and across patients.
【意味】心因性非てんかん性発作は6種類に分類できる.これまでの通説とは逆に,心因性非てんかん性発作は患者さんごとに決まっていて,異なる患者さん同士でも共通する要素が強いようだ.
【説明】「きのうのてんかん」に引き続いて「きょうのてんかん」も,心因性非てんかん性発作(PNES)を取り上げます.この研究ではビデオ脳波モニタリングによって,61例の患者さんから計330回のPNESを観察しました.脳波所見には「てんかん性異常」は認めませんので,発作の分類は症状によります.それぞれのタイプと頻度は以下のとおり(この続きは,左のサイドバー「きょうのてんかん」からお入り下さい).
【原文】The NES Task Force subcommittee on “pseudostatus” recommends that the duration of psychogenic nonepileptic seizure (PNES) is tracked and those events lasting 20 minutes or longer, with or without changes in level of consciousness, are considered nonepileptic psychogenic status (NEPS).
【意味】アメリカてんかん学会の「非てんかん性発作調査特別委員会」に設置されている「”偽てんかん重積”に関する小委員会」は,心因性非てんかん性発作の持続時間を調査することと,20分以上続く発作は意識レベルの変動を伴うか否かに関わらず非てんかん性心因性重積とみなすことを推奨している.
【説明】心因性非てんかん性発作(PNES)を文字通り説明すると,「こころに原因」があって,「てんかんではない発作」を繰り返すことですが,その発作の内容はしばしば専門家でも本当の「てんかん発作」と間違うことがしばしばあります.「ヒステリー発作」と呼ばれ,軽蔑の対象となったような時代もあります.心因性非てんかん性発作は,意識的に発作を装う「詐病」とは違います.患者さんは,本当に発作に悩んでいるのです(この続きは,左のサイドバー「きょうのてんかん」からお入り下さい).